こんにちは、下村です。

土曜日なので、今日は仕事から少し離れた話を書きます。

前置きが長くなると思います。すみません、先に謝っておきます笑

「絵、へたなんで」

以前、アートのワークショップに参加したことがあります。

絵を描く、というより、思っていることを形にしてみる、みたいな時間でした。

正直に言うと、最初は乗り気ではありませんでした。

理由は1つです。

絵が、へたなので。

この言葉、僕はこれまで何十回、いや何百回と言ってきたと思います。

「いや、僕、絵はへたなんで」

「そういうのは、得意な人にお願いします」

言うたびに、少しだけ楽になるんですよね。やらなくていい理由ができるので。

でも、ふと思ったんです

その場で、手を動かしながら、ふと思いました。

うまい/へた って、誰が決めているんだろう。

答えられませんでした。

学校の図工の成績でしょうか。

誰かに笑われた記憶でしょうか。

少なくとも、自分で決めたことでは、なかったんです。

いつの間にか持たされていた物差しで、自分に点をつけていた。

それに気づいて、ちょっと恥ずかしくなりました。

思いが込められているなら、全部アートじゃないですか

そこから、考えが変わりました。

  • 子どもが描いた、線がぐちゃぐちゃの絵
  • 誰かのために作った、少し不格好な料理
  • 何度も書き直した、たった3行の手紙
  • 何十年も同じ場所を掃いている人の、その手つき

思いが込められているなら、全部アートじゃないですか。

少なくとも僕は、そう思うのです。

うまい/へた という線は、あとから誰かが持ち込んだものです。

そして、その線が引かれた瞬間に、線の下にいる人は、やらなくなる。

これが、もったいない。

なんてもったいない!!

……です。

ここからが、AIの話です

なぜこんな話を書いたかというと。

ここ数年、まったく同じ言葉を、また聞くようになったからです。

「AI、うまく使えなくて」

「聞き方が下手なんですよね、僕」

「若い子のほうが、うまいこと使ってますわ」

また、うまい/へた です。

同じ物差しが、また出てきた。

「うまい聞き方」は、あるにはあります

正直に書きます。

多少のコツは、あります。

  • 順番を書いたほうがいい
  • 条件を先に言ったほうがいい
  • 「分からないものは空欄にして」と足したほうがいい

こういうものは、確かに効きます。この連載でも何度か書きました。

でも、これは技術であって、本質ではないと思っています。

いちばんいい答えが返ってくるのは、いつか

僕の実感を書きます。

いちばんいいものが返ってくるのは、うまく聞けたときではありません。

本当に困っているときです。

たとえば、こういう聞き方。

「これ、毎月3時間かかってて、正直しんどいんです。なんとかならないですかね」

こう言ったときのほうが、

「業務効率化の施策を提案してください」

より、ずっといいものが返ってきます。

なぜだと思いますか

理由は、たぶんこれです。

困りごとには、その人の事情が全部入っているから。

「毎月3時間」という時間も、「しんどい」という気持ちも、「なんとかならないか」という切実さも、全部乗っている。

かっこいい聞き方には、それが無いんです。

きれいな言葉に整えた瞬間に、いちばん大事な部分が落ちる。

これ、人に相談するときと、まったく同じですよね。

道具ではなく、相手だと思っています

少なくとも僕は、AIを「正解を出す機械」だとは思っていません。

一緒に考える相手だと思っています。

相手だと思うと、こちらの態度が変わります。

  • 丸投げしなくなる
  • 前提を話すようになる
  • 「ここが分からない」と言えるようになる

不思議なもので、そうすると返ってくる答えも変わるんです。

機械のはずなのに、こちらの姿勢が結果に出る。

ここが、AIのいちばん面白いところだと思っています。

僕が見たい景色

想像してみてください。

「私、パソコン苦手なので」

「僕、文章書けないんで」

「うちみたいな小さい会社じゃ、無理ですよ」

こういう「できない」の言葉が、ひとつずつ減っていったら。

苦手だと言っていた人が、はじめて自分の言葉で会社案内を書く。

数字が嫌いだった人が、自分の店の数字を眺めるようになる。

パソコンに触らなかった人が、「これ、やっといて」と当たり前に頼んでいる。

できる/できない の線が、少しずつ薄くなる。

うまい/へた の線も、少しずつ薄くなる。

僕がAIをやっている理由は、たぶん、そこです。

儲かるからでも、流行っているからでもなくて。

線の下にいると思い込んでいる人が、線をまたげるようになるからです。

すべての人に、役割があると思っています

これは、僕がずっと思っていることです。

得意なことは、人によって全然違う。

数字が得意な人、人と話すのが得意な人、細かい作業が苦にならない人、思いつくのが得意な人。

どれかが上で、どれかが下、ということはないはずなんです。

でも現実には、「これができないと、この仕事はできない」という線が、あちこちに引かれています。

その線の、いくつかは、AIで消せると思っています。

全部は無理です。でも、いくつかは消せる。

それだけでも、やる価値があるんじゃないでしょうか。

長くなりました

すみません、前置きも本編も長くなってしまいました笑

土曜日なので、許してください。

明日は日曜なので、軽い話にします。

AI社員に、名前をつけた話です。

名前をつけただけで、こちらの頼み方が変わった、という不思議な話を書きます。

よかったら、また覗いてください。