福祉の現場でAIに渡せる事務と、渡せない仕事を分けた図

こんにちは、下村です。

昨日から、業種別の話に入っています。

2日目は、福祉の分野です。

なかでも、放課後等デイサービスを取り上げます。

障害のあるお子さんが、学校が終わったあとや休みの日に通う場所ですね。

この業種、事務の量が多いことで知られています。

まず、どんな事務があるのか

制度で決められているものを並べると、こうなります。

  • 支援記録 — 一人ひとり、来た日ごとに書く
  • 保護者の方への連絡 — 連絡帳、おたより
  • 毎月の請求 — 国保連(国民健康保険団体連合会)に出す
  • 加算の書類 — 「要件を満たしています」という証拠を残しておく
  • 実地指導への備え — 求められたときに、すぐ出せる状態にしておく

並べてみて、気づくことがあります。

ほとんどが「決まった形式で、決まった時期に、決まった内容を書く」仕事なんですよね。

そして、これを書いているのは、現場で子どもを見ている人です。

一日じゅう子どもと過ごして、帰ったあとに記録を書く。

やりたくて始めた仕事は、たぶんそっちじゃないと思うのです。

ただ、この業種はAIの話をする前に、確認することがあります

順番を間違えないようにします。

先に、これを言わせてください。

情報の重さです。

この分野が扱っているのは、こういうものです。

  • お子さんのお名前
  • 診断名や、特性
  • ご家庭の事情
  • 学校でのできごと

本人・ご家族の許可なく、外に出していいものではありません。

8月3日の記事で、情報を3つに分けるという話を書きました。

  • ① そのまま入れていいもの
  • ② 名前を伏せれば入れられるもの
  • ③ そもそも入れないもの

福祉の情報は、②か③に集まります。 ①はほとんどありません。

なので、この業種で最初に捨てるべき発想があります。

「AIに全部読ませて、あとはよろしく」は、やらない。

これは技術の問題ではなく、預かっているものの問題です。

その上で、構成の話をします

8月4日に「入れたデータはどこへ行くのか」を書きました。

大事なところをもう一度だけ。

  • ファイルは、自分のパソコンの中にあります
  • AIに渡るのは、そのとき会話に書いた分だけ
  • フォルダに置いてあるだけでは、どこにも行きません

うちで組んでいるAI社員PCは、この形です。

パソコンの中を勝手に全部読んで、どこかに送るようなことはしません。

渡すかどうかは、毎回、使う人が決めます。

福祉の分野では、ここが分かっていることが、そのまま前提条件になると思います。

じゃあ、何が渡せるのか

3つあります。どれも、個人の情報を渡さずにできることです。

① 「型」を作る

いちばん効くのが、これです。

  • 支援記録の書き方の型
  • おたよりの型
  • 保護者面談のときに聞くことの一覧
  • 事故・ヒヤリハットを記録する様式

中身ではなく、入れ物を作る仕事です。

ここには誰の情報も要りません。

型が決まると、書く時間はけっこう短くなります。

書けない理由の半分は、「何を書けばいいか分からない」だったりするので。

② 走り書きを、読める文章にする

現場では、こういうメモが残ります。

「今日 制作 はさみ 最後まで 途中 声かけ1回 笑顔」

これを、記録の文章に整える。

このとき、名前は渡しません。 「Aさん」で足ります。

出てきた文章を、書いた本人が直す。

ゼロから書くのと、直すのとでは、疲れ方がぜんぜん違います。

③ 制度の文章を、噛み砕く

福祉の通知文って、正直、読みにくいですよね。

「この一文は、どういう場合を指しているのか」を、噛み砕いてもらう。

ただし、これは昨日の士業の記事に書いたことと同じです。

AIは、最新の改正を知らないことがあります。

なので、最後は必ず、原文の通知と自治体の説明にあたる。

ここを飛ばすと、あとで返還になりかねません。

そこは譲れないところだと思います。

逆に、渡せないもの

はっきり書いておきます。

支援の中身は、見た人にしか書けません。

その日、その子がどんな顔をしていたか。

何につまずいて、何ができるようになったか。

次に何を試そうと思ったか。

これは記録の心臓部分で、AIが作れるものではありません。

というより、作ってはいけない部分だと思っています。

記録は、書いた人が責任を持つものだからです。

同じ理由で、保護者の方への連絡の「気持ちの部分」も、渡さないほうがいいと思います。

たぶん、読めば分かります。

まとめると、こうなります

福祉の分野でのAIは、こう考えるのが現実的だと思っています。

  • 渡せる: 型づくり/走り書きの整え/制度文の噛み砕き/様式づくり
  • 条件つき: 名前を伏せれば渡せるもの(Aさん、Bさん)
  • 渡さない: 個人が特定できる情報そのもの/支援の中身の判断/気持ちを伝える文章

そして、いちばん大事なのはここです。

情報が、手元のパソコンから出ない形にしておくこと。

そのうえで、渡すものを毎回自分で決める。

面倒に聞こえるかもしれませんが、この面倒くささは、預かっているものの重さに見合ったものだと思っています。

明日は、まったく違う現場です

明日は、製造・建設の分野を書きます。

図面から、クロスや床の数量を拾う話です。

正直、この連載でいちばん「へえ」と言われた仕事です。

実際の計算ルールまで出します。

よかったら、また覗いてください。